遺言の撤回 1

1 遺言の撤回
 遺言書を作成した後に,遺言者の考えが変わり,作成した遺言を撤回したり,内容を変更したりしたいと思うことが,しばしばあります。

 

 民法は,遺言者は,自由に遺言の撤回をすることができるとしています。
 ですから,遺言者は,いつでも遺言を撤回し,新しい内容の遺言書を作成することができます。

 仮に,遺言者が,遺言書に「この遺言書は撤回しない」と記載したり,相続人などに対し遺言を撤回しないとの約束をしたりしたとしても,遺言者は自由に遺言を撤回することができるのです。

 

2 遺言の撤回の方法
 遺言を撤回するに当たっては,遺言の方式に従う必要があります。

 

 方式に従いさえすれば,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言のうち,どの方式を用いても構いません。
 たとえば,後の自筆証書遺言により,前の公正証書遺言を撤回することもできます。

 

 遺言者は,遺言書全体を撤回することもできれば,遺言書の一部を撤回することもできます。

 

 相続開始後の紛争を避けるためには,遺言書の文面としては,「○○を××に相続させる旨遺言したが,前記遺言の全部を撤回する」というように,撤回の対象を明示した方が良いでしょう。
 あるいは,「原遺言中,『○○を××に相続させる』を,『○○を△△に相続させる』に改める」という記載の仕方でも良いでしょう(この場合は,後述の前の遺言に抵触する遺言に当たり,撤回の効力が生じます。)。