4 法律上,前の遺言を撤回したものとみなされる場合
⑶ 遺言者が遺言書を破棄した場合
破棄した部分については,遺言を撤回したものとみなされます。
破棄された部分については,新たな遺言がなされない限り,法定相続分の規定が適用され,相続人間で遺産分割が行われることになります。
撤回の効力が生じるのは,遺言者の意思に基づいて破棄した場合に限られます。
相続人や第三者が勝手に破棄したとしても,法律上は,遺言の撤回の効果は生じません(ただし,他の相続人と紛争になった場合,どのように,破棄される前の遺言の内容を立証するのかという問題が生じます。)。
遺言書を物理的に破棄する場合のほか,遺言書を塗りつぶし,判読できない状態にした場合も,判読できなくなった部分について破棄したものと扱われます。
※ なお,遺言書に加除訂正を加えた場合に,加除訂正が民法の方式を満たさなかった場合には,加除訂正は行われなかったものと扱われます。
ですから,元の文字が判読できる場合は,元の文字が効力を持つことになります。
これに対し,元の文字が判読できない場合は,法的には,判読できない部分に限り,遺言書を破棄したものと扱われ,遺言の一部を撤回したものとみなされます。
⑷ 遺言者が遺贈目的物を破棄した場合
破棄した物に関する部分については,遺言を撤回したものとみなされます。
この場合も,撤回の効力が生じるのは,遺言者の意思に基づいて破棄した場合に限られます。
相続人や第三者が勝手に破棄したとしても,撤回の効果は生じません。