相続のご相談から解決までにかかる時間
1 それぞれの手続きで異なる解決までの時間
相続のご相談内容にはさまざまなものがありますので、それぞれの相談内容によって解決までにかかる時間の見込みも異なります。
そのため、主な相続のご相談内容ごとに、解決までにかかる時間を紹介します。
2 相続放棄
相続放棄は、みずからが相続人となったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所での手続きをしなければなりません。
多くの場合は数週間で申立て手続きができますが、場合によっては、申立てに1か月程度の期間を要することもあります。
裁判所に申立てをした後、裁判所で審理がされますが、そこから概ね1週間から1か月以内に申立てが受理されます。
3 相続税の申告
相続税の申告は、相続の開始を知った日から10か月以内にする必要があります。
相続税の申告では、ある程度の時間的な余裕があるとはいえ、申告にあたって多くの書類を提出する必要がありますので、なるべく早く着手する必要があります。
遅くとも3か月前までには準備に着手することが望ましいですし、期限近くに税理士に申告を依頼されると、その分の費用の加算がある場合があります。
申告にあたって必要な書類の多くがすでに揃っていれば1か月程度で申告ができますが、そのような書類が整っていない場合には、3か月程度の時間が必要な場合があります。
4 遺言書の作成
遺言書の作成においても、どのような内容の遺言書を作成するのか、遺言書の方式をどのようにするのかで、解決までに要する時間が異なります。
内容をしっかりと考えた遺言書とするためには、資料の確認が必要ですし、公正証書遺言とする場合には、公証役場に提出する資料を準備する必要があります。
このようにして作成する遺言書は、おおむね1か月から2か月程度で作成できることが多いです。
5 遺産分割
遺産分割では、相続人の調査(戸籍の収集)、相続財産の調査、分割方法についての協議が必要です。
必要な作業はその相続によって千差万別ですので、なかなか必要な時間を見込むことは難しいです。
遺産分割協議が円滑に進んだ場合には3か月ほどで終わるケースもありますが、協議でもめたり、不動産の換価が必要であったりした場合には、半年以上かかるケースがあり、調停などの裁判手続きになった場合には最終的な解決まで数年かかることもあります。
相続の生前対策をお考えの方へ
1 遺言書の作成
相続の生前対策として、最も重要なのは遺言書の作成です。
相続人が子ども一人しかいないなど、遺言書を作成することのメリットがほとんどない方もいらっしゃいますが、遺言書を書くことのメリットがまったくないという方はまれです。
遺言書を書くことのメリットは、相続におけるトラブルを避けることができるということです。
しかし、遺言書の法的効力やその内容に問題がある場合には、相続におけるトラブルにもつながりますので、注意が必要です。
たとえば、一部の相続人には遺留分がありますが、これに対する十分な考慮をせずに遺言書を作成してしまうと、相続人間での争いにつながりかねません。
また、遺言書を書き上げたとしても、それが法律上の要件を備えていなかったり、法律上の要件は備えていても、その遺言書の記載では相続手続きが進められなかったりすることがあります。
そのようなケースでは、遺言書があることによって、逆に相続のトラブルを発生させてしまいます。
ただし、基本的には、遺言書があることで相続の手続きをスムーズに進められるという場合がほとんどですので、生前対策として遺言書を作成しておくことのメリットは大きいのです。
2 相続税対策
相続の生前対策として重要なのが相続税対策です。
相続税の対策として、生前から、将来支払わなければならない相続税を検討し、これに備えて対策をしておくことは重要です。
このために、まずは自分が亡くなった場合に、どの程度の相続税がかかりそうなのかを検討する必要があります。
相続税には基礎控除額があることから、これを超えそうにない見込みであれば相続税の対策は不要になりますが、これを超えそうであれば、対策をしておくことをおすすめします。
相続税を少なくする方法として、暦年贈与を利用する方法や、生命保険の非課税枠を利用する方法などがあります。
どのような手段をとることがそれぞれの方に適しているかについては、ケーズバイケースですので、相続を専門にしている専門家にご相談されながら進めることをおすすめします。
相続税の対策としては、納税対策も重要です。
というのも、相続税は、原則として金銭で納付する必要がありますので、相続が開始してから納付期限である10か月以内に、相続税を支払う原資を準備する必要があります。
相続税の納付義務のある相続人が、この相続税をスムーズに支払えるように、たとえば、生命保険契約を結んでおいて保険金を原資にできるようにしておくなどの納税対策をするという視点も重要です。
遺産分割についてお悩みの方へ
1 相続財産が少ないから遺産分割でもめないというのは間違い
「うちは相続財産が少ないから遺産分割ではもめない」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
しかし、平成29年の司法統計によれば、相続人間の協議がまとまらないなどの理由で、遺産分割調停になったもののうち、相続財産の総額が5000万円以下のものが全体の75%を占めているとされています。
そのため、このような客観的なデータからすると、相続財産が少ないから遺産分割でもめないというのは間違いだといえます。
遺産分割で特にもめやすいのは、預貯金の額が少なく、主要な相続財産が自宅のみであり、その自宅に相続人が住んでいるといったケースです。
その相続人が自宅を取得して住み続けたいと考えた場合には、他の相続人に代償として金銭を支払う必要がありますが、相続財産に預貯金がなければ、自分の財産から支出せざるをえなくなります。
そのような代償金を支払うことができないという場合には、住んでいる自宅を売却して、その売却金を分けざるをえなくなり、自宅に住んでいた相続人は家を追い出されるという事態に陥ってしまいます。
もちろん、代償金を支払うとなった場合にも、適正な代償金額を算定するためには、その不動産の価値がいくらかが問題となりますし、これについて争いとなるケースも多いです。
このように、相続財産が少ないからといって遺産分割でもめないというわけではありませんので、注意が必要です。
遺産分割について正しい知識がなかったり、進め方を誤ったりした場合にはトラブルとなってしまうことがありますので、ご注意ください。
2 遺産分割は前提となる事実を明らかにすることが必要
遺産分割は、正しい手順で進めることが重要です。
まずは、相続人の調査をすることが必要です。
どのような者が相続人になるのかについては、法律で順位が定められており、これに従って相続人の範囲が確定されます。
相続人の調査は、基本的には、戸籍を収集して行います。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要となるほか、相続人が亡くなった方とどのような関係にあるかによって、必要な戸籍が異なります。
手元に必要な戸籍が揃っていなければ相続手続きは進められませんので、足りない戸籍がないかどうかや、仮に足りない場合にはどのように取得すればよいのかを確実に行っていく必要があります。
相続人の調査を弁護士等の専門家に依頼する場合、弁護士等の専門家には職務上請求という権限が認められていますので、スムーズに戸籍を収集することができます。
次に、相続財産の調査をすることが必要です。
相続財産の調査の方法は、相続財産の種類によって異なります。
不動産の調査方法としては、亡くなった方の住所に固定資産税等の通知書が届いていれば、そのような不動産が相続財産にあることが分かります。
しかし、そこに記載されている不動産がすべての相続財産であるかは分からないため、その他にも財産がないかを調査する必要があります。
この調査方法として、相続財産の不動産があると思われる市町村に対して、名寄帳などの取得を申請し、相続財産の有無やその内容を調べるという方法があります。
預貯金の調査方法として、自宅内から通帳が見つかれば、その金融機関に口座があった可能性が高いということは分かりますし、どのような残高であるかを調査することもできるでしょう。
しかし、通帳は見つからないけれど金融機関に口座があったというケースは意外に多く、亡くなった方と取引があったと思われる金融機関に口座の有無などの照会をすることが必要なことがあります。
相続人の立場であれば、基本的に、金融機関に対してこのような調査をすることが可能です。
3 遺産分割の内容は相続人それぞれの事情に合わせて様々な考慮が必要
相続人の範囲と相続財産の範囲が明らかになれば、次は、相続人全員で遺産分割の内容を話し合う必要があります。
基本的には、それぞれの相続人の法定相続分に従って分け方を決めるということになりますが、相続人全員が合意さえすればどのような分け方であっても法的には問題ありません。
そのため、たとえば、家を継ぐ長男が全財産を相続するという内容でもよいということになります。
相続人が法律上の権利を主張することになれば、法定相続分がいくらであるかが考慮されるでしょうし、寄与分や特別受益といった相続分を修正する事情の有無が話合いの中で出てくることもあります。
このようにして、たとえば、遺産の中に不動産があれば、その不動産をどのように分割するのかが話し合われますし、特定の相続人が不動産を取得することになれば、それが他の財産の分割内容にどのように影響するのかどうか、相続人で共同して売却するのかどうかといったことを話し合わなければなりません。
相続税の申告の必要がある場合には、分割の内容がどのように相続税の内容に影響を与えるのかを検討する必要がありますし、なるべく10か月の申告期限までに遺産分割の内容を決められればよいでしょう。
このように話し合っても遺産分割協議がまとまらない場合には、裁判所に遺産分割調停や審判を申し立てることになります。
遺言書の書き方でお悩みの方へ
1 遺言書は法律上の要件を満たす必要があります
遺言書は、法律で作成方法が厳格に定められています。
なぜ、このように作成方法が決められているかというと、それだけ重要な財産の処分だからと説明されています。
せっかく遺言書を作成しても法律上の要件を満たしていなければ、法律上、有効な遺言にはなりませんし、そのような遺言書の存在がかえって相続における問題を引き起こしかねません。
そのため、遺言書を作るのであれば、法律上の要件を満たしていることに最も注意しなければなりません。
2 どのような方式で作成するのかを考える必要があります
遺言書を作成する方式としては、おもに自筆証書遺言と公正証書遺言による方法があります。
それぞれの方法にメリットとデメリットがあります。
たとえば、自筆証書遺言を作成する場合には、費用もかかりませんし、その分遺言書の書き直しもしやすいと考えられますが、専門家のアドバイスを受けて作成しないと法的に有効でなかったり、相続手続きがうまく進められなかったりするおそれや、遺言書が隠匿されたり紛失したりするおそれがあります。
他方、公正証書遺言を作成する場合には、法的に有効な遺言書を作成できるというメリットはありますが、作成に費用を要しますし、その分遺言書を書き直したいという場合のハードルが高くなります。
遺言者のそれぞれの事情に合わせて、どのような方式で遺言書を作成するのがよいのかを考える必要があります。
3 どのような内容にするのがベストなのかを考える必要があります
法的に有効な遺言書を作成できたとして、作成した遺言書の内容がその方にとってベストなのかどうかを考える必要があります。
遺言書を作成しようと思ったきっかけが、争いのない相続にされたいと思われたのか、特定の相続人に相続させたくないと思われたのか、相続税のことを考えられたのか、それぞれのご事情にあわせて遺言書のベストな内容は変わってきます。
また、遺言書は作成してから効力を生じるまでにある程度の時間がありますので、作成後の事情の変更にも対応できるような遺言書を作成しておく必要があります。
遺言書はいつでも書き換えることができますので、周囲の状況が変わったり、自分の考えが変わったりした場合には、書き換えればよいのです。
私たちも、それぞれのお客さまに合った遺言書の作成方法を考え、アドバイスを行っております。
遺言の作成にお困りの方は、お気軽にご相談いただければと思います。
岐阜で相続の無料相談をお考えの方へ
1 まずは専門家に相談すべき
相続についてのお悩みがある場合には、まずは専門家に相談すべきです。
相続というのは、通常、その人が何度も経験するということはありません。
その人が相続を経験したことがあるとしても、相続に関する事情はそれぞれですので、今回の相続が、以前に経験したとおりに進むとも限りません。
そのため、相続に関しては、まずは相続の専門家に相談しておき、手続きの進め方や、手続きを進めるうえでの注意点を確認しておくのがよいでしょう。
相談をしてから相続の手続きを進めることで、思わぬ不利益を受けることを防ぐことができます。
相続放棄のように、相続の開始を知ってから3か月の期限がある場合などには、当然、迅速に相談すべきですが、そのほかの手続きでも早めの段階から相談しておくことにはメリットがあります。
たとえば、遺産分割の場合、相続人の当事者が、相続に関する知識がない状態で分割の話合いを始めてしまうと、遺産分割の考え方や取扱い方法についての意見が食い違ってしまい、もめてしまう場合があり得ます。
ここで、予め専門家から、法律上正しい遺産分割の考え方や、円滑に協議を進める方法、今回の相続でのポイントとなる事項のアドバイスを受けておけば、そのようにもめることを防ぐことができる可能性があります。
また、相続の生前対策の例でいうと、早めに相談をしておけば相続対策として採りえた方法も、その方が高齢になることによって、採りえなくなることがありますので、早めに相談をしておくのが望ましいといえます。
そのため、相続についてのお悩みがあるときは、まずは専門家に早めに相談されるのがよいといえます。
2 相続の専門家に相談すべき
相続に関する相談は、普段から相続の案件を多く扱っている専門家にすべきです。
なぜなら、相続についての相談において、専門家は、その後の相続の手続きの進み方などを見通したうえで、適切にアドバイスをすることが必要ですが、これをするためには相続に関して多くの経験を持っていることが必要です。
そのため、相続について多くの経験を持っている相続の専門家に相談をすることをおすすめします。
3 無料相談を活用すべき
相続について専門家に相談をするにしても、どのようなことを相談すればよいのか、相談をすることにどの程度のメリットがあるのか分からないということもあるでしょうし、そのような場合には、費用を払って相談をすることに抵抗もあるでしょう。
そのような場合には、相続に関する無料相談を活用しましょう。
最近では、相続に関して、無料で相談を受け付ける事務所も増えてきました。
無料での相談であれば、気軽に利用できるのではないでしょうか。
私たちも、相続に関する相談を無料で受け付けております。
岐阜駅の近くにある事務所でご相談をお受けすることができますので、岐阜で相続についての相談をされたい方は、ぜひご利用ください。
専門家に相続人調査を依頼する場合
1 相続人調査が必要になる場合
相続人調査が必要になる場合というのは、遺産分割によって相続の手続きをする必要がある場合というのが典型的でしょう。
遺産分割は相続人全員によっておこなう必要がありますので、まずはその相続人が誰かということを確定させなければなりません。
多くの場合、相続人の調査は戸籍の取得によって行われます。
たとえば、亡くなった方に子どもがいる場合には、その子どもが相続人になります。
この場合、「その子どもたちですべての相続人であるかどうか」を戸籍によって確認するためには、「亡くなった方が生まれてから死亡するまでの戸籍」を調べる必要があります。
「亡くなった方が生まれてから死亡するまでの戸籍」という言い方をしたのは、これが通常1通の戸籍では済まないからです。
どういうことかというと、人は生まれた後、親と同じ戸籍に入りますが、婚姻によって新しい戸籍が作成されると、そちらに記載が移ることになります。
また、転籍をしていたり、法改正によって新たな戸籍が作成されていたりすることもあります。
相続人調査で「亡くなった方が生まれてから死亡するまでの戸籍」を取り寄せる場合は、これらすべての戸籍の取得が必要となります。
ただし、相続人の方と亡くなった方との関係によって、必要となる戸籍の範囲は異なりますので、詳細は弁護士等の専門家にご相談ください。
2 戸籍の取得の仕方
通常は、亡くなった方の死亡の記載のある除籍謄本から取得し、出生まで遡って取得していくことになります。
戸籍は本籍地の自治体に保管されていますので、本籍地のある自治体で戸籍を取得しなければなりません。
たとえば、亡くなった方の本籍地が岐阜にある場合には、岐阜の市町村の役場で戸籍を取得する必要があります。
なお、本籍地というのは住所とは異なりますので、注意してください(本籍地と住所が同一の場所というケースはあります)。
ここで、「亡くなった方の本籍地が分からない」という方もいらっしゃるでしょう。
このような場合には、自分の現在の戸籍を取得して、その戸籍の記載から遡っていく方法や、亡くなった方の住民票を取得し、そこの本籍地の記載を確認する方法などがあります。
なお、戸籍は郵送でも取得することができますので、岐阜以外の自治体で取得する必要がある場合には、郵送で対応することもできます。
3 弁護士に相続人調査を依頼するメリット
上記のとおり、相続人が誰かを確定するために必要な戸籍の範囲は、それぞれの状況によって異なります。
専門家に相続人調査を依頼した場合には、相続人の確定のために必要な戸籍を過不足なく取得してもらうことができます。
また、必要な戸籍を取得していくには、戸籍の内容を読み解いたうえで、次に必要な戸籍を確認する必要があります。
一般の方は、戸籍を確認することが日常的ではないため、戸籍の記載の意味になじみがないかと思いますが、弁護士等の専門家であればその内容を理解することができますので、戸籍の取得の仕方や相続人が誰かというということを正確に理解することができます。
また、自分から見て両親や祖父母、子どもや孫などの直系の尊属の戸籍を取得することはできるのですが、兄弟姉妹の戸籍を取得することは、実務上、困難な場合もあります。
そのような場合や、「戸籍の取得の仕方が分からない」という場合、「戸籍の取得の仕方は分かるけど、普段、忙しいから、その手続きを依頼したい」という場合には、専門家に相続人調査をご依頼ください。
特に弁護士は、法律上、職務に必要な範囲で戸籍を取得することが認められていますので、そのような戸籍であっても取得することが可能です。
これにより、スムーズに相続人の調査を進めることができます。
専門家に相続についての相談をする流れ
1 相続人に関する事項
相続に関して専門家に相談する場合には、まずはどなたが相続人であるかを教えてください。
相続が発生した場合に、どなたが相続をする予定なのか、その方の法定相続分はいくらとなる予定なのかを把握することがご相談の前提となるからです。
弁護士にご相談いただく場合には、ご相談内容によっては利益相反等の問題でご相談をお受けすることができないことがありますので、このような意味からも相続人に関する事項は必要になります。
相続人を確実に把握するためには戸籍を取得して確認する必要がありますが、まずは分かる範囲で教えてくだされば大丈夫です。
相続人や親族の関係の分かる図をご作成いただけると、スムーズに相談ができます。
2 相続財産に関する事項
次に、相続財産に関する事項を教えください。
岐阜のどちらにどのような不動産があるのかや、どこの金融機関にどのような財産があるのか等をお知らせください。
この際に、資料もお持ちいただけると、より正確なアドバイスをすることができます。
不動産については、法務局で取得できる不動産登記簿(不動産登記情報でも結構です)、岐阜の自治体等から通知される固定資産税等通知書をご用意いただけると、不動産の内容や価値についての参考になります。
預貯金については通帳等を、生命保険については保険証書や契約書等の保険契約の内容が明らかになる資料をご用意ください。
その他に、株式や債務等の、相続財産に関する資料をご用意いただきたいと思います。
このような資料がない場合にも、現時点で分かっている情報をもとにご相談をお受けすることができます。
3 ご相談の内容
相続に関するご相談内容としては、生前の相続対策、遺言書の作成、遺産分割協議、遺留分侵害額請求、相続放棄、相続手続き、その他の相続関係のご相談など、さまざまなものがあります。
上記の中で、ご相談をされたい大まかな内容をお伝えください。
相続を得意とする専門家であれば、お話しをお伺いした上で、解決の見通しなどについて説明をしてくれるかと思います。
その他、気になっている点や疑問に思う点などがありましたら、お気軽にお伝えいただければと思います。
相続に強い専門家に依頼するメリット
1 専門家のすべてが相続に強いわけではない
相続に関わる専門家としては、弁護士や税理士、司法書士などがいます。
岐阜でも、多くの弁護士や税理士、司法書士が相続に関わっていますが、このような専門家のすべてが相続に強いわけではありません。
なぜなら、それぞれの専門家の業務分野として、相続のほかにも幅広い業務分野があるため、その専門家が相続の案件を多く扱っていない場合には相続に強いとはいえない場合があります。
一度、他の分野の案件で依頼したことがあるという理由や、単にその専門家と知り合いだからという理由で依頼されることもあるかと思いますが、その専門家が相続に強いかどうかを確認することはとても重要です。
2 相続の知識や最新の動向を熟知している専門家に依頼するメリット
相続案件を進めるにあたって、相続に関する法律的な知識が必要であることは当然だと思います。
単に法律的な知識だけではなく、例えば不動産についていえば、どのような評価のされ方があるのか、どのような要素が評価額の増額や減額につながるのかなど、相続では幅広い分野の知識も必要となります。
特に、岐阜の案件であれば、岐阜の不動産の市況などについても理解があることが重要でしょう。
相続法については、近年、民法の規定が改正され、その内容が大きく変わりましたし、相続税についても、控除の要件や効果などが頻繁に変わるため、相続に関する最新の動向を知っていなければ適切なアドバイスができません。
万一、依頼した専門家がこのような知識を持っていなかったり、最新の動向を理解していなかったりすると、大きなリスクになりかねませんので、依頼する専門家が相続の知識や最新の動向を熟知していることのメリットは大きいといえます。
3 相続についての多くの経験を持っている専門家に依頼するメリット
依頼する専門家が相続についての多くの経験を持っていることは重要です。
依頼する専門家が多くの経験を持っていれば、依頼者の方に合わせた様々な内容の提案をすることができますし、その提案内容を実現する際にも、以前の経験を参考に進めることができるため、スピーディーに進めることができます。
また、多くの経験を持っていれば、何か想定していないことが起きた場合にも臨機応変に対応できますし、案件の解決までにかかる時間や費用についても的確に見通すことができるため、依頼者の方にとっても、先の予想が立てやすいといえます。
4 相続に関する他の専門分野にも強い専門家に依頼するメリット
相続には様々な専門家が関わっています。
ただ、それぞれの専門家が自分の専門分野以外の知識を持っていないことも多いです。
そのような専門家が相続の案件に携わった場合、他の分野の知識が欠けているために当事者が想定していない結果になってしまったり、必要な書類が抜けてしまっていたりすると、トラブルになりかねません。
また、担当していた案件を他の専門家に引き継ぐ際も、ご自身で一からその専門家に説明する必要があるため、依頼者の方にとっては負担となってしまいます。
そのため、相続に関わる他の専門家も所属している事務所や、普段から他の専門家と連携している専門家に依頼することには大きなメリットがあります。
相続における期限
1 期限のある相続の手続き
被相続人が亡くなった後,相続人にはやるべき手続きがたくさんあります。
これらの中には期限がないものもありますが,法律上,一定期間の間に手続きをしなければ不利益を被るものもあります。
相続手続きのうち,期限があるものには,以下のようなものがあります。
なお,期限があるものをすべて網羅しているというわけではありませんので,ご注意ください。
2 相続放棄の手続き
相続放棄をするためには,家庭裁判所に相続放棄をする旨の申述を申し立てなければなりません。
この申述を申し立てなければならない期限は,みずからが相続人となったことを知ってから3か月以内です。
この期限については,裁判所に申し立てれば伸長してもらうことができる場合があります。
3 税金の関係
年の途中で被相続人が死亡した場合には,1月1日から死亡した日までに確定した所得について準確定申告をする必要があります。
この準確定申告の期限は,相続の開始があったことを知った日から4か月以内です。
また,相続税の申告が必要な場合もあります。
相続税申告の期限は,被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
この期限が土曜日,日曜日,祝日に当たるときには,これらの日の翌日が期限になります。
4 遺留分侵害額(減殺)の請求
遺贈や贈与によって相続人の遺留分が侵害されており,遺留分侵害額(減殺)請求をする場合には,みずからの遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に行う必要があります。
また,相続の開始から10年経過した場合にも,この請求はできなくなります。
5 管轄についての注意
これらの手続きを行う裁判所や税務署には管轄が決まっています。
相続放棄の申述申立てであれば,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄です。
そのため,岐阜に住まわれている方が,単に近くて便利だというだけで岐阜家庭裁判所に相続放棄の申立てをした場合,実際の管轄が岐阜ではない裁判所であれば,場合によっては期限に間に合わないことがあり得ます。
このようなことがないようしっかりとご自身で手続きのことを調べたうえで余裕を持って手続きをしていただくか,専門家に手続きを依頼するようにしましょう。
相続での不動産の名義変更
1 亡くなった方の不動産の名義を変更するには
相続の際、亡くなった方の名義となっている登記済みの不動産の名義を変更するには、法務局での手続きが必要です。
この手続きをしていないと、その不動産を売却しようとしたときに、すぐに売却ができないなどの不都合があります。
それぞれの不動産ごとに管轄の法務局があるため、その法務局で手続きをすることになります。
その不動産のある各自治体の法務局のホームページで確認することができます。
2 登記手続きに必要な書類
相続において、登記手続きに必要な書類はさまざまです。
遺産分割協議書を作成する場合には、相続人全員の実印による押印や、印鑑登録証明書が必要です。
この場合の印鑑登録証明書は、売買等の場合とは異なり、発行日から3か月以内のものでなくとも問題ないとされています。
その他にも、亡くなった方の相続関係が分かるものとして戸籍等の書類を提出しなければなりません。
特に、戸籍については、亡くなった方が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍が必要です。
相続人が子や配偶者だけの場合は、戸籍を集めるのはそこまで大変ではありませんが、相続人が親や兄弟の場合は、法務局に提出する戸籍がとても多くなります。
3 登記手続きにかかる費用
不動産の登記手続きには、登録免許税が費用としてかかります。
登録免許税は、不動産の固定評価額をもとに算出されます。
ほかに、専門家に登記手続きを依頼する場合には専門家への手数料がかかります。
4 登記されていない建物の名義変更
登記されていない建物についても、名義を変更しておく必要があります。
各自治体が申請用紙を用意していますので、その用紙を使って作成しておくことが無難です。
5 不動産の名義変更をしない場合のリスク
名義を変えないまま放置しておくと、所有者が誰なのか分からなくなり、次の世代に問題を積み残すことになります。
また、その建物が長期間空き家になり、倒壊のおそれがあれば、行政が建物を取り壊すため、その費用を支払わなければならなくなります。
そのため、不動産の名義変更は、早急に行う必要があるのです。
私たちが相続案件を得意とする理由
1 相続チームの専門家が相続案件を集中的に取り扱っていること
私たちは、相続をはじめ様々な分野において、その分野を得意とする専門家が中心となってチームを作り、案件を担当しております。
相続については、相続案件を得意とする弁護士・税理士らが中心となって相続チームを設け、集中的に相続業務を取扱っております。
これは、1人の専門家があらゆる分野を網羅的に取り扱うよりも、特定の分野を集中的に取り扱う方が、圧倒的に多くの経験を積むことができると考えているからです。
2 弁護士法人心の弁護士・税理士法人心の税理士がトータルサポート
相続チームには、弁護士法人心の相続を得意とする弁護士の他に、グループ企業である税理士法人心の税理士が所属しています。
相続では、生前の相続対策としての遺言書、相続開始後の遺産分割など様々な場面で、誰がどれだけの財産を相続するといくらの相続税がかかるのか、という税金の視点が欠かせません。
弁護士法人心・税理士法人心では、相続チームに所属する弁護士・税理士が、法律・税金の両方の立場からトータルサポートさせていただくことで、お客様にとって最適なご提案をいたします。
3 綿密な打合せをしやすい環境作り
相続案件では、多くの場合、相続財産の調査、相続人の調査、単純承認・限定承認・相続放棄手続きの選択、遺産分割協議についての方針決定などのため、お客様との打合せを複数回行うことになります。
岐阜市にある私たちの事務所は、岐阜駅から徒歩3分、名鉄岐阜駅から徒歩2分という、お立ち寄りいただきやすい場所にあります。
また、私たちが指定する駐車場であれば、契約いただいたお客様への駐車券サービスも行っておりますので、打合せが複数回になったり、打合せ時間が長引いたりした場合でも、駐車料金を心配される必要はありません。
法律事務所のなかには、裁判所近くに事務所を設けているために、最寄り駅から距離が遠かったり、駐車場がなかったりする場合もあります。
相続についての相談先を選ぶ際は、打合せをしやすい環境かどうか、あらかじめ確認されることをお勧めします。
法定相続分の意味合い
1 法定相続分どおりに相続をする必要はない
相続では、法律で法定相続分というものがあり、きちんと分け方が決まっているものだという印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。
例えば、亡くなった方に妻(配偶者)と子ども2人がいる場合、それぞれの相続分は、妻が2分の1、子どもが4分の1ずつになると説明されます。
たしかに、この説明は、民法で定められている法定相続分の説明としては正しいといえます。
しかし、実際の相続をこの法定相続分どおりにしなければならないわけではありません。
2 遺産分割協議をする場合の法定相続分の意味合い
遺産分割協議をする場合、遺産分割協議はあくまで相続人全員の合意によって成立しますので、特定の相続人の取得分が少なくても、その相続人がそれで納得していれば問題はありません。
むしろ、形式的に、法定相続分にしたがって平等に取得することが、すべての相続において望ましいというわけではありません。
たとえば、相続財産に不動産がある場合、すべての相続人がすべての不動産をその法定相続分の割合で共有とすれば平等だといえるのかもしれませんが、権利関係が複雑になったり、共同して管理や処分をしたりすることが必要になってしまうため、相続人にとって望ましいものではないでしょう。
ただし、相続人にはあくまで法定相続分という権利があるわけですから、これを基準にしながら遺産分割協議を進めていくということは合理的な進め方であるとはいえます。
3 遺言書を作成する場合の法定相続分の意味合い
遺言者は、遺言書を作成することで、相続人それぞれの相続分を指定することができますので、法定相続分どおりに相続させなければならないわけではありません。
たとえば、上の例でいうと、妻の相続分を3分の2、子どもの相続分を6分の1ずつというように相続分を指定することができます。
ただ、実際には、相続人それぞれの相続分を指定するというよりも、特定の財産を、誰に、どのように相続させるかという内容の遺言書が作成されることが多いといえます。
この場合にどのような遺言書の内容になるかというと、同じく上の例でいうと、妻に自宅を相続させ、預貯金は妻が2分の1、子どもそれぞれが4分の1ずつ相続させるといったものです。
ただ、遺言書を作成する場合には注意をしなければならない点があります。
相続人の一部には遺留分が認められており、これを侵害するような遺言書である場合には、自らの侵害された遺留分を取り戻すことを請求することができます。
このような遺留分を侵害する内容の遺言書であっても法的には有効ですし、遺留分を侵害されていたとしても、その相続人が請求をしなければ問題はありません。
しかし、相続人の間でのトラブルにつながりかねないため、遺留分に配慮した遺言書とすることが必須でしょう。
どのような遺言書が、遺言者と相続人にとって望ましい内容なのかは非常に難しい点ですので、遺言書を作成される際には、このような観点からのアドバイスにも対応できる専門家に相談しましょう。
遺産分割調停ってどんな手続き?
1 遺産分割調停は敷居が高い?
相続が発生した後には、相続人間で遺産の分け方を話し合うことが多いと思います。
ただ、相続人間で直接話し合いをすると、感情的になってしまったり、相続そのものとは関係のないことを色々話し始めてしまったりして、協議がうまくいかないこともあります。
そのような場合に利用できる有効な手続きとして、家庭裁判所の遺産分割調停があります。
実際に当法人が相続の相談をお受けする中でも、調停=裁判所=敷居が高い、というイメージが先行し、「なるべく調停はやりたくない」と考える方が大勢いらっしゃいます。
しかし、実は、当事者間でずるずると話し合いを続けるより、調停の手続きを利用したほうが、遺産分割がスムーズに進むこともあります。
2 遺産分割調停はどんな手続き?
そもそも、遺産分割調停とはどのような手続きなのでしょうか。
調停とは、家事審判官(裁判官)と調停委員(2人または3人)から組織される調停委員会が、申立人、相手方それぞれから言い分を聞き、話し合いで解決できるように斡旋する手続きです。
調停委員は、一般市民の良識を手続きに反映させるため、社会生活上の豊富な経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。
3 遺産分割調停の始め方
遺産分割調停の始め方は、申立てをしたい人が、申立人以外の共同相続人全員を相手方として申立をします。
申立てをする際には、所定の申立書のほか、亡くなった方の最後の住所地が分かる住民票の除票、相続人の住所地が分かる住民票、相続人が誰かを確定できるだけの戸籍、相続財産である不動産の全部事項証明書など、様々な書類が必要になります。
最初にこれらの書類をしっかり整理して裁判所に提出することで、申立後の調停がスムーズに進みます。
4 遺産分割調停で解決しない場合には
遺産分割調停で解決しない場合には、審判の手続きに移ることとなります。
調停が不成立となった場合には、自動的に審判の手続きが開始されます。
審判は、家事審判官(裁判官)が法律に従って判断する手続きです。
調停段階では当事者の前にあまり出てこない家事審判官(裁判官)が、直接審判の席に現れ、当事者から話を聞き、遺産をどのように分けるかの判断をします。
5 遺産分割調停の手続きを十分に利用するために
このように遺産分割調停は便利な手続きですが、申立てをすれば自動的に問題が解決できるわけではありません。
財産の内容やそれを裏付ける資料が整えられていないと、調停が始まった後も、資料の整理のためだけに何度も時間を取られてしまい、場合によっては、手続きが難航することもあります。
このような資料の整理といった対応は、相続の事件に慣れた弁護士に任せたほうが安心です。
また、裁判所で調停を担当している調停委員には、それぞれに個性があり、話のまとめ方や相続に対する考え方も様々です。
したがって、岐阜の相続事件であれば、岐阜の家庭裁判所で多くの事件を担当している弁護士に任せた方がよいでしょう。
相続放棄と相続分の放棄、相続分の譲渡の違い
1 遺産分割協議から抜けるには
遺産分割協議は、原則として相続人全員で協議して行われます。
そして、この協議は、時に親子間や兄弟間に激しい感情的対立をもたらすことがあります。
そのため、遺産はいらないからこのような争いごとにかかわりたくないという方もいらっしゃると思います。
では、そのようなとき、遺産分割協議から抜けるにはどうしたらよいのでしょうか。
この方法としては、①相続放棄、②相続分の放棄、③相続分の譲渡の3つの方法があります。
2 相続放棄
相続放棄をするには、家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
申述をする家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
例えば、被相続人が生前岐阜市に住んでおり、その岐阜市の自宅で亡くなった場合は、岐阜家庭裁判所へ相続放棄の申述をすることとなります。
この相続放棄の申述には期間制限があり、法律上は、相続が開始し、自分が相続人となっていることを知ってから3か月以内にしなければならないとされています。
この期間のことを熟慮期間といい、この期間を過ぎると原則として相続放棄をすることができなくなってしまうため注意が必要です。
申述を行い、家庭裁判所で申述が受理されれば、相続開始時から相続人でなかったとみなされるので、遺産分割協議の当事者から抜けることができます。
3 相続分の放棄
相続分の放棄と、先ほどの相続放棄は、名前はよく似ていますが手続きとしては異なるものです。
相続分の放棄とは、遺産について自己の持分を放棄し、遺産分割協議の当事者から脱退するというものです。
放棄した相続分は、基本的には、他の相続人に、その法定相続分に応じて分配されます。
相続分の放棄は、相続放棄と異なり、家庭裁判所に申述する必要もありませんし、時期の制限もありません。
ただ、すでに遺産分割調停がなされている場合に、相続分の放棄をする際は、「相続分放棄証書」と「手続からの排除申出書」を作成し、裁判所に提出します。
4 相続分の譲渡
相続分の譲渡とは、相続人の地位を他人に譲り渡すことをいいます。
相続分の放棄と同じく、家庭裁判所に申述する必要はなく、期間の制限もありません。
相続分の放棄と異なる点として、① 特定の相続人の相続分だけを増やすことができるので、例えば仲の良かった相続人の相続分だけを増やしてあげるということができるという点や、② 譲渡の対象は、相続人に限られず、全くの他人に譲渡することもできるという点などがあります。
これも、すでに遺産分割調停がなされている場合は、「相続分譲渡証書」と「手続からの排除申出書」を作成して裁判所に提出します。
5 ご相談は当事務所まで
遺産相続に関わりたくないのであれば、相続開始後ただちに相続放棄をすることが大切です。
もっとも、遺産分割において揉めることがないようにするためには、事前に遺言によって準備をしておくことも重要です。
事前に準備を行う際には、弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるのが望ましいでしょう。
当法人の事務所は、岐阜駅から徒歩3分、名鉄岐阜駅から徒歩2分の場所にあり、気軽にご相談しやすい立地となっています。
相続に関する諸手続についてお困りの方は、お気軽に当法人までお問い合わせください。
相続財産の範囲
1 相続財産の範囲
民法は、相続が開始すると、被相続人に属した一切の権利義務は、原則として、すべて相続人が承継すると規定しています。
一切の権利義務には、個別の動産や不動産などの権利、債権・債務、契約上の地位など、あらゆるものが含まれます。
債務も相続の対象になりますから、相続により、相続人が多額の債務を負うこともあります。
その場合は、相続放棄や限定承認を検討する必要があるでしょう。
契約上の地位も対象に含まれますから、賃借人や賃貸人の地位も承継されます。
被相続人が所有していた農地についても、相続の対象となります。
なお、農地法3条は、農地の所有権移転には農業委員会または都道府県知事の許可が必要と定めていますが、相続により農地を承継した場合には、許可は必要ありません。
ただし、農地のある市町村の農業委員会にその旨の届出をする必要があります。
2 相続財産の範囲につき争いがある場合
⑴ 遺産の範囲確定の必要性
ある財産が、生前被相続人に属していたものであるかどうかについて争いがある場合は、遺産分割の手続きをどのように進めるのが良いのでしょうか。
結論としては、遺産分割に先立って、調停や訴訟により遺産の範囲を確定するのが良いといえます。
それは、次のような理由によります。
最判昭和41年3月2日民集20巻3号306頁によれば、家庭裁判所は、遺産の範囲など、遺産分割の前提事項について当事者に争いがある場合でも、遺産分割審判において、その前提事項について審理判断した上で、遺産分割を行うことができるとしています。
しかし、遺産分割審判において前提事項について家庭裁判所が審理判断したとしても、その前提事項には既判力が生じません。
このため、遺産分割審判の内容に不服がある当事者が、遺産分割審判とは別に、遺産の範囲確認のための民事訴訟を提起することは、妨げられないということになります。
このような遺産分割審判後の紛争の蒸し返しの恐れを考えると、遺産分割審判に入る前に、遺産の範囲について、既判力のある判断を得ておいた方が良いということになります。
⑵ 遺産の範囲確定の手続き
遺産の範囲の確定に当たっては、まず、遺産の範囲確認の調停を申し立てる必要があります。
相手方の住所地が岐阜市内であれば、岐阜家庭裁判所に調停の申立てを行うことができます。
調停が不成立となった場合は、遺産確認の訴えを提起することができます。
被告の普通裁判籍所在地(住所など)または被相続人の普通裁判籍所在地が岐阜市内であれば、岐阜地方裁判所、岐阜簡易裁判所に訴えを提起することができます。
なお、この場合は、共同相続人全員が原告または被告として関与する必要があります。(固有必要的共同訴訟といいます。)
関与していない相続人がいる場合は、訴えが不適法却下されます。
3 相続財産に当たらない財産
生前被相続人に属していた財産であっても、次に挙げるものは、例外的に相続財産には当たりません。
⑴ 一身専属権
民法は、被相続人の一身に専属したものは、相続人に承継されないと定めています。
一身専属権とは、個人の人格・才能や個人としての法的地位と密接不可分の関係にあるため、他人による権利行使を認めるのが不適当である権利のことをいいます。
例えば、扶養請求権や婚姻費用分担請求権、生活保護受給権、年金受給権、公営住宅の使用権などが、一身専属権に当たるとされています。
ただし、扶養請求権や婚姻費用分担請求権については、過去にすでに発生し、調停や訴訟により金額が確定しているものについては、一身専属権には該当せず、相続の対象になるとされています。
⑵ 祭祀財産
民法は、祭祀主宰者が祭祀財産を承継すると定めており、相続財産とは別個に承継するものとしています。
例えば、系譜、位牌、仏具、神棚、墳墓などが祭祀財産に該当します。
遺骨が祭祀主宰者に帰属するとした判例もあります(最判平成1年7月18日家月41巻10号128頁)。
祭祀主宰者は、①被相続人の指定により、②指定がない場合は、慣習により、③慣習が明らかでない場合は、審判により、定められます。
なお、被相続人によって祭祀主宰者として指定された者(①)は、これを辞退することもできるとされています。
⑶ 死亡退職金
死亡退職金は、公務員や民間企業の従業員の死亡に際して、勤務先から支払われる退職金です。
最判昭和55年11月27日民集34巻6号815頁は、退職手当に関する規程において、受給権者の範囲・順位につき、民法の規定する相続人の範囲・順位と異なる定め方をしている場合には、死亡退職金の受給権は相続財産には属さず、規程上の受給権者の固有の権利に属するとしています。
ただし、場合によっては、死亡退職金を特別受益として扱うこともあります。
⑷ 生命保険金
生命保険金は、受取人が相続人の一人であったとしても、相続財産には属さないとされています。
さらに、最判昭和40年2月2日民集19巻1号1頁は、受取人が「相続人」と定められている場合も、生命保険金は相続財産には属さず、相続人固有の財産になるとしています。
したがって、相続人の中に相続放棄をした者がいたとしても、その者は生命保険金を受け取ることができます。
また、相続人が複数いる場合、保険契約の約款上、各人が受け取るべき割合について定めがあれば、その定めどおりの割合で保険金を受け取ることができます。(均等の割合で受け取ると定めていることがほとんどです。)
ただし、場合によっては、生命保険金を特別受益として扱うこともあります。
4 被相続人の金銭債務
⑴ 金銭債務の承継
金銭債務は、相続の開始により、当然に法定相続分に応じて相続人間で分割されるとされているため、当然には遺産分割の対象になりません。
被相続人の債務が連帯債務である場合も、当然に法定相続分に応じて分割されることになります。
例えば、AとBが400万円の連帯債務を負担していたとします。
そして、Aが亡くなり、妻aと子b、cが相続したとします(遺言なし)。
この場合、妻aの法定相続分は1/2であり、子b、cの法定相続分はそれぞれ1/4です。
したがって、400万円の連帯債務について、妻aは200万円の限度で負担し、子b、cは100万円の限度で負担するということになります。
保証債務についても、連帯債務と同様に、法定相続分に応じて当然に分割されることになります。
⑵ 承継されない債務
一部の保証債務については、相続による承継の対象になりません。
- ア 根保証債務
-
継続的な関係から生じる不特定の債務を、保証人が担保するものです。
例えば、会社が金融業者から事業資金の融資を受け、社長が個人保証する場合に、一定の期間を定め、その期間内であれば何度でも借入れと返済を繰り返すことができることとし、その期間内に生じた不特定の債務を社長が個人保証することが、典型例です。
信用保証債務ともいいます。
かつて、判例は、保証限度額と保証期間の定めのない根保証債務について、特段の事由のないかぎり、相続人が承継するものではないとしました(最判昭和37年11月9日民集16巻11号2270頁)。
現行民法も、一定の根保証債務について、保証人の死亡により元本が確定するとの規定を置いており、相続人の負担を限定しようとしています。
ただし、賃貸借契約期間中に発生する、賃借人の賃料債務や損害賠償債務を保証する場合については、判例は、保証債務が相続の対象になるとしています(大判昭和9年1月30日民集13巻103頁)。
- イ 身元保証債務
-
被用者が使用者に対して負う損害賠償債務を、保証人が担保するものです。
判例は、身元保証債務は原則として相続されないとしています(大判昭和18年9月10日民集22巻948頁)。
5 被相続人の契約上の地位
⑴ 契約上の地位の承継
被相続人の契約上の地位も、原則として、相続人に承継されます。
他方、民法は、一定の契約については、当事者の死亡により当然に終了するものとしています。
使用貸借(借主の死亡により)、委任(委任者または受任者の死亡により)、組合(組合員の死亡により)が、これに当たります。
⑵ 使用貸借契約について
使用貸借契約とは、無償で他人の物を使用する契約のことをいいます。
家族に対して好意で土地や建物の使用を認め、家族がそこに居住したり、事業を営んでいたりする場合は、使用貸借契約が締結されているものとして扱われることが多いです。
民法は、借主の死亡により、使用貸借契約は終了するものとしています。
しかし、不動産について使用貸借契約が締結されている場合は、被相続人の死亡により、残された家族が即座に立ち退きしなければならないとすることは、残された家族にとって酷であることもあります。
このため、過去の裁判例の中には、借主が死亡したとしても、土地に関する使用貸借契約が当然に終了するということにはならないとしたものもあります。
とはいえ、同種の事案で裁判所が同様の結論を出すかは不透明であり、貸主との間で賃貸借契約を締結し直した方が妥当な解決となる場合も多いと考えられます。
相続で困ったときは誰に相談すればよいか
1 相続手続きはなぜ大変か
⑴ 調査事項が多い
相続の手続きを行う際には、前提として、どのような遺産があるのかを特定する財産調査と、誰が相続人となるのかを確定する相続人調査が必要です。
そのためには、銀行で残高証明書の発行を依頼したり、戸籍謄本の交付を請求したりといった手続きが必要となります。
戸籍謄本につきましては、戸籍を管理している市役所とやり取りをして、戸籍を取得することになります。
たとえば、被相続人の本籍地が岐阜市にある場合は、岐阜市役所とやり取りをして、戸籍を取得しなければなりません。
財産が複数の金融機関、証券会社などに分散している場合や、相続人が岐阜以外の場所にも多数いる場合には、手続きの請求先が増えることになりますので、調査にかかる手間も増えることになります。
⑵ 手続きの期間制限
遺産分割そのものには期間制限はありませんが、相続放棄は原則として自分が相続人であることを知ってから3か月以内、相続税の申告は被相続人が死亡したことを知ってから10か月以内、遺留分侵害額請求は自分の遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内に行わなければなりません。
自分が相続放棄をすべきなのかどうか、自分の遺留分が侵害されているのかどうかなどは、遺産の総額と自分の相続割合が分からなければ判断できない場合が多いため、相続財産と相続人の調査を先に済ませなければならないことになります。
親族が亡くなられた後は、お葬式や初七日、四十九日法要など、行わなければならない祭祀が続きますし、大事な人が亡くなられたことによるショックもあります。
そのような状況でも、上に述べたような手続きをしなければならないというのは、想像以上に大変な作業となります。
⑶ 分割方法が決まらないケースが多い
上記の手続きも終えて、いざ相続人で遺産の分割方法を決めようとなっても、誰がどのような財産を取得するのかで争いになることも少なくありません。
もともと相続人同士の仲が悪ければもちろんのこと、相続人同士の関係が良好であっても、金銭が絡むと話がこじれてしまうケースは多々あります。
このように遺産分割協議がこじれるケースは、遺産の総額が多い場合だけではありません。
全国の家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割についての紛争は、平成27年の統計では、遺産総額5000万円以下が7割、そのうち1000万円以下が3割になっており、必ずしも、遺産総額が多いから紛争になりやすいというわけではないということが分かります。
このように、遺産の分割方法でもめてしまうと、相続人同士の話し合いだけでは決着がつかず、進展がないのにストレスばかりが溜まっていくという事態になってしまう可能性もあります。
2 相続で困ったら相続・税務の両方に取り組んでいる事務所に相談
⑴ 弁護士に頼むメリット
上記のように、相続の場面では、相続は財産調査や相続人調査など、行わなければならない手続きがたくさんあり、しかも、それを一定の期間内に済ませなければ多大な不利益を被る場合があるなど、非常に負担が重い作業を行う必要があります。
また、遺産分割について当事者で話し合うのみでは、その分割方法が法的に妥当なのかどうかの判断ができず、本当は主張できるはずの権利を失ってしまうおそれもあります。
弁護士に一切の手続きを任せれば、遺産分割に必要な手続きを代わりにしてもらうことができますし、法律に則った方法での分割を主張することもできます。
さらに、相続案件を多数取り扱っている弁護士であれば、その経験からどのような点が揉めやすいか、最終的にどのような結論になるのかなどの見通しを立てることができますので、遺産分割協議をスムーズに進めることができる可能性が高くなります。
⑵ 相続と税務の両方に取り組んでいる事務所の強み
相続は税務の問題と非常に密接した関係にあります。
なぜなら、遺産の分割方法によっては、相続税の控除が使えなくなったり、思わぬ税負担が生じてしまったりする場合があるからです。
したがって、遺産分割では、税務の観点からのチェックも必要となります。
もっとも、別々の弁護士と税理士に依頼すると、手間も費用もかかってしまいかねません。
相続と税務の両方に取り組んでいる事務所であれば、弁護士と税理士が連携することにより、この手間と費用を節約でき、かつよりよい解決に導くための提案を行うことができるかと思います。
相続開始後のスケジュール
1 相続のタイムスケジュール把握の重要性
ご家族が亡くなられた場合、その悲しみや、お通夜やご葬儀の準備などのため、相続について気にする暇もないことが多いと思います。
しかし、相続の諸手続きには期限があるものや、多くの準備を要するものもあるため、事前にタイムスケジュールを把握して、計画的に行動することが重要になります。
2 相続財産調査
相続財産調査では、不動産や預金などのプラスの部分だけでなく、ローンなどのマイナスの部分についても調べる必要があります。
プラスの部分よりもマイナスの部分が多い場合、相続放棄をすれば、プラスの部分を引き継ぐことができなくなりますが、マイナスの部分についても引き継がなくても良いこととなります。
ところが、この相続放棄には期限があり、その期限内に家庭裁判所で申述しなければなりません。
申述を行う家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地となりますので、被相続人が岐阜市内で亡くなられた場合は、岐阜家庭裁判所で申述を行うことになります。
相続放棄は、マイナスの資産が多い場合は非常に有効な手段ですので、相続放棄するかしないかの判断を行うためにも、相続財産の調査はまっさきに行うべき事項になります。
3 遺言書の有無の調査
遺言書があれば、遺産分割協議を経ることなく、遺言書のとおりに遺産を引き継ぐことができますので、遺言書の有無は非常に大事です。
一般的に用いられる遺言の方式には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は、日付と全文、署名を自筆で書き、押印するという方式です。
遺言書を書かれた方自身で保管されることが多いですので、自宅の引き出しや仏壇、貸金庫を探すと出てくることがあります。
公正証書遺言は、公証役場において公証人に作成してもらう方式で、原本が公証役場に保管されます。
被相続人の死亡後であれば、相続人は、公正証書遺言が存在するかどうかについて、全国どこの公証役場でも確認することができます。
例えば、被相続人が岐阜市内の公証役場で公正証書遺言を作成していたとしても、市以外の公証役場でも遺言の有無を検索することができます。
4 相続人調査
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。
もし、一部の相続人が欠けた状態で遺産分割協議書を作成したとしても、その遺産分割協議書は法的には無効になってしまいます。
後で遺産分割協議書が無効になる事態を避けるためには、前もって、被相続人の出生から死亡までの戸籍をそろえて、相続人を全て調べる必要があります。
5 遺産分割協議、遺産分割協議書作成
相続人で、遺産の分割方法について話し合います。
感情的対立が激しいなど、話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所で遺産分割調停を行うこともあります。
6 相続財産の名義変更や預金の払い戻し
作成した遺産分割協議書を用いるなどし、相続財産の名義変更や預金の払い戻しを行います。
不動産の名義変更については、法務局において、相続登記の申請を行う必要があります。
預金の払い戻しについては、それぞれの金融機関とやり取りを行い、金融機関の所定の書式を作成し、手続を進めることとなります。
いずれの場合も、遺産分割協議書に相続人全員の印鑑証明を添付して、手続を進めることが多いでしょう。
7 相続税の申告
遺産総額が基礎控除額以下なら、相続税はかからないため申告は不要です。
遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税が課税されることとなりますので、決められた期限内に、相続税の申告と納付を行う必要があります。
遺産総額が基礎控除額を超える場合であっても、小規模宅地の特例などの適用を受けることにより、結果的に相続税が課税されないこととなることもありますが、この場合には、特例などの適用を受けるため、相続税申告を行う必要があります。
申告・納付が必要にもかかわらず、それをしなかった場合は、延滞税や無申告加算税が課税されるなどの様々なペナルティーがありますので、注意が必要です。
法律上の相続放棄と事実上の相続放棄ではどのような違いがあるのか
1 相続はしたくないという方の事情
亡くなった方(被相続人)の相続人の方の中には、様々な理由から「相続したくない」と思われる方もいらっしゃいます。
たとえば、被相続人に借金がたくさんある場合、被相続人と生前疎遠だったため財産があったとしても相続することを望まない場合、自分の生活が安定していて財産はいらないと考える場合、相続財産の管理に手間がかかると予想される場合など、様々な事情があります。
2 法律上の相続放棄と事実上の相続放棄との違い
遺産分割協議の結果、「何の財産ももらわなかった」ため、相続放棄をしたと勘違いしてしまう方もいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。
法律上の相続放棄をした場合と、遺産分割協議で何の財産も取得せず、事実上の相続放棄をした場合との一番大きな違いは、被相続人の債務を免れることができるかどうかという点です。
法律上、相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになりますので、プラスの財産もマイナスの財産も引き継がなくてもよいこととなります。
これに対して、遺産分割協議を行った場合は、何の財産も取得しなかった場合であっても、その相続人は、債権者に対して、「私は借金も返さなくていい」と主張することはできません。
このことは、相続人が話し合って、特定の人が債務を負担し、他の人が債務を負担しないことを合意した場合であっても変わりません。
「被相続人の債務は私がすべて引き継ぎ、私以外の相続人は債務を免れることとする」(これを「免責的債務引受」といいます)ことを、債権者も交えて合意したのでなければ、債権者との関係では借金を返さなければならない立場は変わりません。
そして、気をつけなければならないのは、法律上、相続放棄をするためには、以下で述べるように、民法で定められた期限内に、家庭裁判所で決められた手続きをしなければならないという点です。
3 相続放棄の手続き
相続放棄の手続きをするためには、自分が相続人となったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申述する必要があります。
亡くなった方の最後の住所が岐阜市であれば、岐阜家庭裁判所が管轄裁判所になります。
例外的に、相続人となったことを知ったときから3か月を過ぎても相続放棄ができる場合もありますが、これが認められるケースは限られていますので、3か月以内に確実に手続きがとれるように準備しておくべきでしょう。
相続放棄の手続きをする前に、被相続人の財産を処分するなどの行動をとってしまうと相続放棄ができなくなる場合がありますので、注意してください。
相続人にとって、相続放棄ができるかどうかで法的に大きな違いが生じますので、判断に迷われたときは専門家にご相談ください。